「アサヒ」


都築がアサヒに声を掛けた。アサヒは振り返って都築を見る。


「いいか、一言一句間違えないでヘンリーさんに言え。優雨はアサヒが間違ってないか言葉を聞いて確認しろ。わかったな?」


「何が?」あたしの疑問にも「いいから言う事聞け!」と強く返してきた。


都築はタバコをゆっくり一本吸うと、ヘンリーさんをまっすぐ見た。

ヘンリーさんも都築が何を言うか興味津々で見ている。


「俺は全員が嫌いです」


都築の言葉に(やっぱりな・・・)とあたしは思った。


鈴木も深いため息をついた。


「でも、俺は優雨のドラムも鈴木のベースも好きです。・・・アサヒが書く曲も好きだし、声質も・・・ギターを弾いてて、コイツに書かせて正解だったって思う。俺はギター下手だけど、『Jams』ってバンドが好きです。俺達は演奏が下手だけど、まとまればちゃんと人を魅了出来るバンドになりますか?」


アサヒが目を大きく見開いた。

あたしも、鈴木も。


「早く伝えろ!二度と言わねーからな!恥ずかしいしバカバカしい」


そう言ってそっぽを向いた。



しばらく沈黙してたけど、アサヒがニヤっと笑って「はいよ」と言った。


それからヘンリーさんに都築の言葉を間違いなく一言一句伝えた。


「間違ってねーだろうな?」


都築があたしを見た。


「一言一句間違ってなかったよ」


あたしもニヤっと笑って答えた。