曲が終わって、アサヒがあたしを見てちょっとビックリしている。
でも、何も言わないであたしが手にしているレコーダーの停止ボタンを押した。
「何で泣くの?泣くような曲じゃないし、曲調も激しいじゃん」
気がつくとあたしの目がからはボロボロと涙がこぼれていた。
「あたし、アサヒの事救える?」
「何言ってるの?救う?どういう事?」
怪訝な顔をしている。
「アサヒの曲、聴くとね苦しいんだ。助けてって聞こえるんだよ」
「それは書き手として耳が痛い話だな。反省すべきかな?」
苦笑いをするアサヒ。
そんなアサヒにあたしはギュっと抱きついた。
「は?何?どうしたの?」
「あたしさ、初めて会った時に『アサヒの世界を変える』って言ったから。でも、実は苦しいんじゃないかって、押しつけたんじゃないかって思うから」
アサヒの手があたしの背中に回る。しっかり抱きしめてくれた。
「優雨には充分、世界を変えてもらってるよ。俺、音楽好きだしギターも好きだし、苦しいけど作曲も作詞も好き。歌は・・・苦手だけどね」
ちょっと半笑いの優しい声が返ってきた。
「そっか」
アサヒの胸の中であたしも少し笑った。