ざっと読んであたしはアサヒに言った。

「歌ってみて」


「は?ヤダよ。みんなメロはわかってんだからいいだろ、別に」


「だってアサヒからもらったメロって鼻歌じゃん。曲調はわかるけど、歌詞乗っけてみないと世界観わかんないよ」


「・・・わかったよ」


アサヒがギターを持ち上げてベッドに腰を掛けた。


「あー!!ちょっと待って!!」


あたしは慌ててアサヒの荷物の中を物色する。


「おい、何やってんだよ!」


「あったー。あたし部屋に忘れたから」


電子レコーダーを手に取ってあたしはニコリと笑った。

録音ボタンを準備して「いいよ、歌って」と言う。


「録音必要ないだろ、別に」


「ダメ。戻ってPCに落としてみんなにデータ渡さないと。ライブまで後2日よ?時間がないんだから」


「はいはい」


ため息をついてから、目を閉じてアサヒがギターを弾き始めた。



アサヒの歌声を録音しながら黙って聴いていると色々思う。

歌っているアサヒを見ると考える。

アサヒの歌詞はちょっと歪んでいて、出てくる女の人は狂っていて、

そしてアサヒは歌っている時、何だか悲しそう。

曲を作る時、歌詞を書く時、どう思っているんだろう・・・。



この人は誰かに救われたいのかな・・・?

助けてって信号を発してしるのかな?


あたしが・・・アサヒを救える?