「誰かに手を貸してもらうのは簡単だけど、自分の力があるならあたしは助けない主義なの」
「うん。俺はリハビリすれば治るからね、それに同情されないのって事故ってから実は初めてで嬉しかった」
「リハビリってどんな事するの?」
アサヒは空を仰いだ。
「うーん、普通。歩行練習とかそんな感じ。歩くのはそんなに苦じゃないんだ。気をつければ転ばないしね。ただ・・・手のしびれが取れないんだ。まぁ、俺左利きだからそこは助かってるけどね」
「ふーん・・・」
あたしはちょっと考えた。
手のしびれ・・・。
ただ、希望もなくリハビリをしているこの人・・・。
「ねぇ!」
あたしはアサヒの肩を掴んだ。
アサヒはビックリしている。
「音楽好き?ロックとか」
「は?・・・まぁ、聴く専門だけどそれなりに好きだけど・・・何?」
あたしはバッグからメモとペンを取って、住所とライブハウスの名前を書いた。
「ここ、あたしのバイト先。おいでよ、あたしがアサヒの世界変えるから」
「何で・・・?」
「言ったでしょ?音楽に言葉はいらないの。通じ合えるのよ。アサヒの世界、変わるかもしれないじゃない」
「そんな・・・わかんないじゃん」
アサヒは呆れた顔をした。
「そう!わかんないのよ。だから、試しにおいでよ!あたし待ってるから」