「あ、グレッチだ。でも随分古い感じだね、すごく使いこんでる」


黒いグレッチは所々色がはげているけどメンテはしっかりしている。


「アサヒ、古いんじゃなくて味があるって言ってくれない?本当に楽器に疎いんだから」


鈴木がため息をついた。


「そうだぞ。あのな、このギターはすっげー価値あるんだから。お前少しは楽器の勉強しろよ」


都築も呆れた声を出した。


「はいはい、ビンテージって言うんだろ?うるせーな。それよりヘンリーさん、何か弾いてよ」


あたしはヘンリーさんに「弾いてほしいって」と言うとニッコリ笑ってカウンターの椅子に座ってピックじゃなく指で弾き始めた。



ヘンリーさんの弾く曲は聴いた事がない曲で何だか切ないんだけど、微笑んでしまうような不思議な曲だった。



曲が終わってもあたし達4人は黙り込んでしまった。


あたしはすごく感動したんだけど、アサヒと都築は表情は何だか違った。



「Did not you like it?」
(気に入らなかったかな?)


ヘンリーさんが苦笑いした途端に鈴木が拍手をした。


「すごい!!僕、すごい感動したよ!!」


鈴木の拍手を聞いてヘンリーさんはちょっと安心したみたいだ。


「あんた達どうしたの?」


あたしが2人に言うと都築は「別に、すごいのわかった」と下を向いたけど、逆にアサヒはヘンリーさんを睨むような顔で言った。


「その曲、いつ作ったんですか?」