「へぇ・・・・」
店の中を見てアサヒが感嘆の声を上げた。
このバーにはカウンターと数席しかテーブルがなくて、割りと広いんだけど他は全てステージとなっている。
グランドピアノがデンと構えてて、その後ろにはちょっと高くなったステージ。
ドラムが後ろに鎮座している。
両サイドにはアンプがあって、それはビンテージ物。と言っても、ヘンリーさんがバーを開業してもう30年以上経つから自然とビンテージになったらしいけど。
「すげー、このアンプもう廃盤ものだぞ!」
都築が駆け寄ってアンプを見ている。
「すごいね!!ヘンリーさんは何でも演奏出来るの?」
鈴木が興奮しながらヘンリーさんに言った。
あたしがヘンリーさんに言おうとすると「待って!」と言って携帯を出して同じ質問をしている。文字が出てきたのだと思うけど、ヘンリーさんと携帯を交互に見ながら棒読みなヘタクソな英語で伝えている。
「Though a piano, a sax, a drum do anything, it is a guitar to like me most.」
(ピアノ、サックス、ドラム、何でもやるけど、僕が一番好きなのはギターだよ。)
ニコニコしながらヘンリーさんが答える。
「ギターが好きなんだ!!優雨、それくらい僕にもわかるよ」
「うん。ヘンリーさんのギターはジャズなんだけど、何ていうか深いんだよね。だから初めてここでヘンリーさんのギターを聴いた時に思わず叩きたいってなったの」
ヘンリーさんにそれを伝えると、ニッコリとあたしに微笑んだ。
「俺、ヘンリーさんのギター聴きたいな」
アサヒが言うと、「OK」と言って店の奥へと消えて行った。
ギターケースを抱えて戻ってきたヘンリーさんをみんなが囲んでいる。
ケースを開けながらヘンリーさんは言った。
「It is my important close friend」(僕の大事な親友だよ)