「いいよー。もちろん社員価格で提供しますよ。鈴木くんのベース達のメンテ材料だね。相変わらず大事にしてるんだね、みんなの事」
「うん!これさえあればみんなもっと自由な音作れそう」
あたしは興奮しっぱなしのアサヒと鈴木から視線を都築にうつした。
ショーケースに厳重に保管されているギターをじっくりと見ている。
「あんたも何か買うの?」
「うーん・・・、俺のギター高いからさ。アメリカで盗まれたら終わりだろ?だからアメリカ用にいいのがあればなって思って見てたわけ」
あたしもショーケースの中を見た。全部30万以上のギターばっかり。
「あんたってレスポール好きよね」
「まぁな。ちょっとこれいいなぁってのがあるんだよ」
そう言って指差したのは赤茶っぽいレスポール。32万。
「買うの?これ」
「どうすっかなー。迷い中。音、聞いて決めるけど」
それを見ていた上月が「いいんじゃない?」と言った。
「都築くんの演奏聞いたけど、ちょっとあのビンテージじゃ荷が重いのは事実だよ。楽器に気の毒。でも、これは鳴らしてみたけど、今の都築くんに合ってる音を出せると思うよ。弾いてみなよ」
鍵を開けてギターを出すと、「ほら、座って弾いてみて。弾いたらわかる」と言いながらギターを手渡した。
戸惑いながらも受け取って座ってピックを持つと「あ・・・」と呟いた。
「でしょ?」上月はニッコリ笑顔になった。
ちょっと弾いてみてあたしは驚いて口に手をやる。
「これ・・・」都築も戸惑った顔で上月を見た。
「どう?自分の持ってるギターとどっちがしっくりくる?ギターも出会いと相性だからね」
都築が鳴らした音は今まで散々聞いてきた音より数段違った。