「よーく見るとね、ネックの上に擦り傷があるんだ。だからこの値段。弾いてみたけど問題なし!弦も張り替えたし、弾いてみる?」
「うん」
そう言ってからそっとギターを取り出した。
そばにあるマーシャルのアンプに繋ぐ。
アサヒはため息のような呼吸をして目を閉じる。
これはアサヒがギターを弾く前のくせ。
目を開くと、思い切り激しい音を出し始めて、それからゆっくりな音に変化していく。
あたし達はそれを黙ってみていた。
しばらく夢中でギターを弾いていたアサヒがピックから手を離すとまたため息をついた。
「やっぱすげー!!音が全然違う!!ネックも全部!!最高!!」
「それはよかった」
上月が笑顔で頷いた。
「上月くん、マジありがとう!!予算よりかなり安くてお釣りが出る!」
「そうなの?それならこのマーシャルのアンプ、買っていけば?今までのアンプよりかなり違うから」
「うん」
「上月、そんなにアサヒに買わせて大丈夫なの?」
「え?大丈夫だよ。アサヒくんの予算は20万だったから。このマーシャルも明日にはなくなっちゃうよ」
「何で?」
「このアンプが入ったら連絡下さいって電話殺到してるの。だから売りたいヤツにさっさと売っちゃう。これもかなりいい音出すからね、この値段で」
「上月くん!!」
今度は鈴木が何か手に山ほど持って歩いてきた。
「僕、これ全部ほしいんだけど!」