あたしもつられて笑って彼に手を差し出した。


「あたしは竜崎 優雨。あなたは?」


「俺は田所 朝陽(たどころ あさひ)。・・・疲れた」


あたしは彼を思い切り引っ張ってしっかり立たせると


「そこ、ベンチあるから座らない?頑張ったからジュースくらい奢るよ」


そう言って彼の手を引いてゆっくり歩き出した。


彼も足をひきずりながらゆっくりついてきた。




ベンチに座ってペットのお茶を渡すと彼は喉を鳴らして飲んだ。


あたしもアサヒの隣に座ってお茶を飲む。



「・・・君って帰国子女かなんかなの?」


急に聞かれてビックリする。


「え?」


「だってさっき黒人女性と何か揉めてたよね?それ見てたら転んだ」


笑いながら言う。


「あぁ、違うよ。あたしはバックパッカーなの。英語も適当。色んな国で覚えたから正しい英語かはわかんない」


「バックパッカー?・・・へぇ・・・。何でそんな色んな国回ってるの?ボランティアとか?」


あたしは首を振ってジーンズの両足をリズムを刻みながら叩いた。

アサヒはよくわからないという顔であたしを見ている。


「音楽。色んな国の色んな民族とか部族とセッションするのが夢。あのね、音楽には言葉はいらないのよ。楽器がなくても、ほら、叩けば何でも音が鳴る。音で世界の色んな人と繋がりたいだけ」


アサヒは自分の両手を見て、あたしのように自分の足を叩いた。

あたしとは違う音が鳴る。