「デンバーか・・・」


ライブハウスの機材を掃除しながらあたしは呟いた。


「あれま。デンバーってアメリカじゃない、あんたバンド辞めてまたバックパッカーに戻るつもりなの?」


店長の声に「そうじゃないんだけどさ・・・」と返事をした。


「メンバー来たら言ってみるよ」


「いきなり解散かい?身勝手なリーダーだね」


「いや、違うんだよね。逆っていうのかな?」


あたしの言葉に店長は首を傾げた。




夕方、いつものようにメンバーがぞろぞろと入ってきて、スタジオの中。


アサヒはノートを抱えて頭を掻きむしっている。



(アサヒがこんな状態で話ても大丈夫かな?)



まぁ、考えてもしょうがないか。




「あのさ」


あたしが声を掛けると全員がコッチを見た。


「あんた達、パスポートある?それに英語喋れる?」


あたしの質問に3人はキョトンとした顔をしている。



「持ってるけど、一応は」


鈴木が言うと2人も頷いた。


「そう。じゃぁ英語は?」


あたしの言葉に誰も何も言わない。