スタジオのドアを開けるとまた鈴木と都築が揉めている最中だった。
「だから、ここのサビに入る前に何でその音が必要なんだよ!」
「うっせー!デブ!!この方がサビ盛り上がるだろ!!」
「余計な事だよ!何かサビがおかしくなるだろ!!」
「講釈ばっかりたれるなよ!お前はどうなんだよ、ちゃんとベースライン出来てるのか!?」
あたしはそれを見て笑ってしまった。
「あ、優雨!!もー、都築くん全然ダメなんだよ!何とか言ってよ!!」
鈴木があたしを見て悲痛な声を上げる。
「何がだよ!お前がイチイチうるせーんだよ!」
あたしは椅子に座って笑いながら言った。
「ねぇ、今から殴り合いの喧嘩しない?勝ったヤツのラインに従うってのはどう?」
『はぁ!?』
同時に声が上がる。
「冗談よ、揉めるの結構。上等じゃない。アサヒがもがいてる間にあたし達も喧嘩しても殴り合いしても自分の中で出来る最大級の事しようよ。アサヒがビックリするくらいにさ」
都築は目をまん丸くしてあたしを見た。
「お前・・・バカか?」
「バカで結構。さーて、あたしも練習練習」
スティックを手にあたしはドラムへ向かった。
(アサヒ・・・見てなさいよ、あたしは最高の音を作る)