「あら、あんたのくせに冴えない顔してどうしたの?」
ライブハウスのカウンターに座ると店長が不思議そうにあたしを見た。
「ねぇ、バンドって難しいんだね。あたしね、音を共感出来れば繋がるって思ってるの。それは間違ってないと思うんだけど・・・」
「そうね・・・、優雨はどんな時でもポジティブが売りなんだけどねぇ・・・」
そう言ってあたしの前にホットミルクを出した。
「何でホットミルク?」
「イライラはカルシウム不足。それとホットミルクって何だか安心しない?」
そう言って笑った。
あたしも「そうだね」と笑い返した。
「ウイーッス!!」
そこへ元気な声が店中に響き渡った。
振り返ると上月がギターを抱えて入ってくるのが見えた。
「上月?どうしたの?」
「は?個人練習に来たんだけど。お前がいるって事はJamsの皆さんお揃いか。アサヒくんは?会うの久々なんだよなー」
嬉しそうな上月にあたしは首を振った。
「アサヒ、今日は来てない。作曲と作詞してるから」
「あ、そうなの?前に店長から聞いたけどかなり追い込まれてるらしいじゃん」
「そうだね。追い込んでるのはあたしなのかもね」
ため息をついてタバコに火をつけると、上月が横に座った。
「ホットミルクってお前子供かよ」
「うるさい」
あたしが睨んでも上月は笑っている。