クス・・・・。
あたしのすぐそばから笑い声が聞こえた。
一緒にいた彼女の声だ。
「え?」
あたしが聞くと彼女は笑ったまま言った。
「だって面白くない?」
あたしの頭の回路の何かが切れた。
気づくと彼女の頬を思い切りビンタしていた。
「あたしはアンタのそういう所が嫌いなんだよ!エジプトでみんなのもの盗んだでしょ!あたし知ってるんだからね。だからアンタは信用出来ない!!」
あたしはバッグを掴むと転んでいる彼の元へ走った。
転んでる彼は辛そうな顔をしてでも必死で立とうとしている。
いかにも出しゃばりそうなオバサンが「手伝おうかしら」と呟いているのを聞いて思わず「Fall silent!」(黙れ!)と怒鳴ったらビックリしていた。
さっきから英語使ってたからだ。
「彼は自分の力で立つの!誰も手を貸しちゃいけないんだから」
その言葉に彼はあたしを見た。キレイな顔、女の子みたい。
「ほら!頑張って自分の力で立ちなさいよ!人に甘えてたら生きていけないんだいだからね!」
それから20分かけて彼は何とか立ち上がった。
額に汗を浮かべながらあたしに「ありがとう」と微笑んだ。