「いや。
カウンター高いからやり辛そうって思っただけ」


「あぁ……」


特に会話は続かず、私は相槌を打ったまま、またノートに目を移した。


ギッ、て、座っているパイプ椅子が少し軋んだ音を出した。


「……」


会話をほんの少しでもすると、何故か沈黙が今まで以上に重くなる。


確かにやり辛いよ、って、今更ながら答えるのも、何だか違う気がした。




「その本の犯人……」


「……え?」


「父親だよ」


「……」




あ。


早瀬君が無表情のまま固まった。




タラララ、ラララ~。


吹奏楽部の合奏の練習が始まったらしい。