「あ……、うん。
また、教えてくれる……かな?」


すらすらっと嘘が出た。


自分でも驚いた。


だってこの問題、この前早瀬君が教えてくれたところを少し応用しただけの設問だし。


分からないなんて、相当理解力無いって思われるし。


言ってから気付いたけれど、早瀬君は既に折りたたみ椅子を私のすぐ横に近付けて、


「いいよ。
どこ?」


と、ご指導モードに入っていた。


心構えする暇も無く、早瀬先生殿の御説明が始まる。




早瀬君は前回同様、丁寧に教えてくれた。


意識しているからか、実際そうなのか、前よりも顔が近い気がしてドキドキする。


説明する指を見ては、この手に腕を掴まれたんだ、と。


説明する口元を見ては、この口が私の手に触れたんだ、と。


私は欲求不満なのかと自己嫌悪に陥るくらい、めちゃくちゃ早瀬君を意識してしまった。