「……楠原」


「はいっ」


びっくりした。


盗み見していたからというのもあるけれど、驚き過ぎて、声かけられてコンマ1秒くらいで返事をした。


「ハッ。
早……、返事」


クスクス笑われる。


「……」


もう、赤くなるしかない自分の顔。


「手、止まってるけど、また分からないの?
数学」


チラッと私の宿題に目を移す早瀬君。


読書してるのに、よく見えているな。


確かに開いただけで1問も解いていない。


早瀬君を見ていたんだから当たり前だけど。