パラリ。


早瀬君が本をめくる音。


私はガサガサと数学の宿題を出し、高いカウンターで不格好に解き始める。


少し喋るようになると、沈黙の重さが倍になる。


それは、もっと喋りたいからなのか、相手を意識しているからなのか分からないけれど。


「……」


……うん。


この得体のしれない元カレに対して、中学の時とは全く違った種類の興味を抱き始めていることは、……確かだ。


ちらりと読書中の早瀬君を盗み見する。


さっきの女の子泣きそうになってたけれど、告白されて断ったの?


昨日のあの行動は一体何だったの?


元々貴族のお家柄なの?


聞きたいけれど、聞けない。


踏み込み方が分からない。