ぐいっ。


急に早瀬君が私の腕を掴んだ。


「!!」


びっくりした私は思わず手をグーにする。


その手を自分の目の前まで持ち上げた早瀬君は、私の拳の指の部分に、そっと口をつけた。


――え?


そのまま視線だけ私に移す。


「高校の男は中学のガキとは違うからね。
こんな細い腕、簡単に押さえつけられるよ」


「な……」


ゆっくり私の腕を離す早瀬君。


「ちゃんと嫌なこと嫌って言わなきゃ、男の子達に何されても知らないよ」


怒ってる顔?


ただ注意してくれている顔?


それとも、特に何も考えていない顔?


このポーカーフェイスからは、何も読み取ることが出来ない。




「じゃ、バイバイ。
また明日」


軽く手を上げ、早瀬君はサラッと帰って行った。