「まあ、嫌なこと嫌って言えないんだったら仕方ないか」


ちょっとチクリと刺された。


早瀬君てこういうところあるよな。


たまにだけれど、急にイジワルを言うというか、人の痛いところをストレートにパンチする。


「いいじゃん、早瀬君だってそれなりのことしてるくせに」


私はムキになって早瀬君のシャツを引っ張ってしまった。


2人とも歩いていた足が止まる。




「楠原、ガキっぽい……」


向かい合った早瀬君は私を見下ろしながら、ただそれだけ言った。


ああ、いつもの無表情。


私だけが熱くなってる、また……。


「……」


周りを見ると、私の家はもうすぐそこだった。