「楠原さ、俺のことからかってたの?」


「ちがっ……」


カタン……。


思わず立ち上がってしまった。


早瀬君に見上げられて急に恥ずかしくなり、私はそのままストンと座り直した。


「違うよ。
は、恥ずかしくて……。
恥ずかしかったんだよ。
あの頃は」


「ふーん……」


「早瀬君だって、何も話しかけてこなかったし」


「……。
恥ずかしかったんだよ。
あの頃は」


「……」


私の言葉を繰り返した早瀬君は、あまりにも落ち着いていて、なんだか動揺した私がバカみたいだった。