「あのさ」


パラリ。


早瀬君が本を1枚めくり、視線は本のままで話しかける。


「……うん」


「記憶違いだったら悪いんだけど」


「うん」


ギッ……。


パイプ椅子の軋む音。


「俺達つきあってた?」


「……」


普通に考えると、この質問はおかしい。


間違いなく、おかしい。





「……うん。

……た、ぶん……」


それでも私は、若干うつむきがちに、そう答えた。


この答え方も十分おかしいが。


「ふーん……」


「……」


「彼氏いない歴17年?」


「……だって、あれは」