楠原は思いの外早く着替えてきた。
リビングにいた俺は、ドアからこそっと顔を出す楠原に気付き、
「2階上がって奥の部屋行ってて」
と伝えた。
「あ、の……。
おうちの人は?
挨拶しなきゃ……」
ダボダボの俺のTシャツとジャージを着た楠原は、ドアに手を掛けながらキョロキョロする。
「あと1時間くらいしなきゃ帰ってこないよ」
「あ……。
そ、そうなんだ」
楠原は笑いつつも複雑そうな顔をして、俺のジャージの裾を引きずりながら階段の方へ向かっていった。
子供みたいなその様子に、思わず吹き出しそうになるのをこらえる。
俺も濡れた制服を脱ぎ、ラフな格好に着替えた。