最近、楠原はクラスの中でもちゃんと心からの笑顔を見せるようになってきた。
深沢と牧野ともかなり打ち解けてき出して、前みたいに人の顔色を窺って無理して笑うようなことも無くなってきた。
ずっと見てきた俺は楠原の表情の違いがよく分かる。
ああ、今本当に嬉しいんだな、とか。
ああ、今本当は嫌なんだな、とか。
だからこそ、無理した表情が次第に素直な表情になっていくのを見るのは、なんだか自分以外に楠原の良さをばらされているようで、嬉しい半面、少し寂しくもある。
ほんの少し病的なこの独占欲に、我ながら大人げないな、と笑ってしまう。