でも、そんなパニックの中でさえ、嬉しさがじわじわ込み上げてくる。
シャツ越しに伝わる早瀬君の体温と心臓の音が、私の頬を、耳を、心地良くさせていく。
「……」
続く沈黙の中でゆっくり自分の手も早瀬君に回してみた。
恥ずかしいけれど、めちゃくちゃ恥ずかしいけれど、これも1つの自分の気持ちの伝え方。
ふわって、早瀬君が頭上で笑ったような気がした。
「楠原、ここ何日かで大人になったね」
少しだけ腕を緩めてくれた早瀬君が、優しい声で話しかける。
「そ、うかな……?」
籠った声で返す。
「うん。
俺も早く大人にならないと」
「だから早瀬君は……」
私なんかより全然大人で、落ち付いていて……。
「俺、どんどん幼児化していってるよ」
「?」