「ずるい、早瀬君」


「何?」


穏やかな顔のまま私を弄んでいる。


なんだか、私だけが好きで私だけが負けているみたいだ。


「私、頑張ったのにっ。
頑張って言っ」


「3年間、ずっと好きだったよ」


いきなり顔に影が出来たかと思うと、早瀬君が私の耳元でボソッと言った。







ザッ、ザッ、ザッ……。


コンクリートを踏みしめて歩く2人分の足音が響く。


普段笑わない早瀬君が、笑いをかみ殺しているのが分かる。


私はというと、赤面し過ぎて俯いたまま早瀬君に手を引かれて。


まるで、お父さんに連れられている小学生みたいだ。




「ずるい……」


ようやく発せた一言はそれ。


手の平で転がされた挙句のノックアウト。


結局、私は最初から負けているんだ。


勝てないんだ、早瀬君には。