ニッと笑う早瀬君。


彼は一体いくつの顔を持っているんだろう。


「悪いけど、あと1時間、この図書室でも教室でもグラウンド脇でもいいから待ってて」


「え、あ……」


「一緒に帰ろ」


ムニッとほっぺたをつままれた。


「ぅあ……。
ひゃい……」


はい、と答えたつもりだった。


「ハハ。
可愛い」


手を離し、またにっこり笑う早瀬君。


「じゃ、一時間後、靴箱で」


軽く手を上げ、廊下を走っていった。




私はもう、頭中がぐるぐるして、顔中がポッポッして、立っているのがやっとだった。