「……」
早瀬君は私を慈しむみたいにじーっと見つめる。
「う……」
どうしよう。
返事とか、くれないのかな?
今のが、返事代わりだったのかな?
だとしたら、解釈は……。
「あーーー」
早瀬君が大きな溜め息のような呻きのようなものを発する。
表情は大して変わらないのに声は今までで一番大きく、静かな廊下全体にとても綺麗に響いた。
かなり、……びっくりした。
「今、めちゃくちゃ楠原を抱き締めて、超触りまくりたいのに。
俺、汗掻いてるからできない」
「っ……」
私は早瀬君らしからぬ言葉に一瞬硬直して、また血液が顔に一気に集中した。