「……」


カタン……。


閉めた図書室の扉に置かれた早瀬君の手。


体重がかかって、小さな音を立てる。


程なくして、私の唇に掠るように優しく、柔らかいものが触れた。


同時に左頬に濡れた髪の毛らしきものが当たったので、ビクッと一層強張ってしまった。


息を止めていた私は、一瞬のことでも、とてつもなく息苦しく感じた。


頭の中が沸騰しそうだ。


私の想像通りのことが執り行われたんだとしたら、恥ずかし過ぎてどうすればいいのか分からない。






「……」


離れていった早瀬君は、


「ハハ。
真っ赤だ」


と、笑った。


私はその声でようやく目を開けることと息をすることを思い出した。