「……ごめん」
早瀬君は穏やかな顔に戻って、濡れた額を手の平で拭いた。
掻き上げた髪が、少しずつ束になっている。
あ、あああ。
違う。
こんなふうにしたい訳じゃないんだ。
自分ですら感情をコントロールできないし、いっぱいいっぱいで上手く言葉が出てこない。
頭の中で、頭をぶんぶんと横に振る私。
少しずつ溜まっていく涙。
このまま、うわーん、て泣いてしまいたいのを我慢する。
私はいろんなことが、まだ、ホントに下手っぴだ。
「……」
「……」
沈黙を作ってしまった。
早瀬君の休憩は10分しかないのに。
せっかくここまで来てくれたのに。