「……」


でも、今なんだ。


今、言わなきゃいけないんだ。


私はカバンを握る手をぎゅっと強くした。


俯いた顔を、しっかり早瀬君に向けた。






「私もちゃんと好きだったの。
早瀬君のこと」


「……」


窓から射す夕日の光が眩しいけれど、ツ……、と早瀬君の汗がこめかみを伝ったのが見えた。


「京子ちゃんが勝手に告白した後からだったのかもしれないけど。
……でも、ちゃんと好きだったの」


「……ハ」


ハハ……、と笑う早瀬君。


「その話か……。
そんなに力んで話さなくても」


「笑わないでっ!」


廊下に声が響く。


私は自分の声に驚く。


感極まって、顔が勝手に歪んだのが分かった。