……いや。
違う。
後悔って言っちゃいけない、まだ。
私はかがんで少し俯いた顔をゆっくり上げる。
窓から入る風が爽やかに額をくすぐる。
私は変わるんだ。
いくら想ったところで、想った分だけ伝わるわけじゃない。
伝わらない、じゃない。
伝えていないんだ、まだ。
想いは言葉にしなきゃ、届かない。
大人じゃない私は、尚更。
明日、ちゃんと言おう。
ちゃんと自分の口で、早瀬君に好きって言うんだ。
中2の私と今現在の私の気持ちを、そのまま、ただ、素直に。
再度背筋を伸ばして、早瀬君を見る。
「あの、すみません。
返却なんですが……」
「はいっ」
振り向くと本を持ってきた女子生徒。
私は慌てて印鑑を取り出した。