「じゃ」


軽く手を上げて木之下君はまた扉の方へ戻ろうとした。


「あのっ!」


私は思わず呼び止める。


ゆっくり振り返る木之下君。


「なんで?
なんで知ってるの?」


「……」


体を半分だけこちらに向けながら、頭をポリポリ掻く木之下君。


「見たから」


「どこで?」


私と木之下君は中学校が違う。


高校上がるまで会ったことは無い。


「孝文んちで」


「は?」


私は固まった。


何を言ってるんだ?木之下君は。


私、早瀬君の家なんて行ったこと無いし。