「……」


私はぼんやりと早瀬君が座っていた折り畳み椅子を見続ける。


……最初は違ったのかもしれない。


恋によく似た、自己暗示だったのかもしれない。


でも、つきあっているという名目の下、私は確かに彼を目で追い、彼を意識し、彼に想いを寄せていた。


喋りかけることが出来ない彼氏、早瀬君。


接点と噂が薄れる中、私の中の彼への気持ちも、真昼の月みたいにあるのか無いのか分からなくなったけれど。




でも、本当に早瀬君が好きだったんだと、あれは確かに初恋だったのだと、


張本人である私は、ちゃんと、……ちゃんと言い切れる。