ギッ……。
放課後。
図書室。
カウンター席に1人座る私。
グラウンドから聞こえる、ボールがバッドに当たる小気味よい音。
砂と一緒にボールを蹴る乾いた音。
大勢で走る靴音と掛け声。
音楽室から聞こえるトロンボーンの間の抜けた音。
読書スペースには自習をしている人が2人ほど。
本を選んでいる人はいないみたい。
パラリ。
私はさっき本棚から持ってきた推理小説を開いた。
隣に人がいないから集中して読書できるはずだった。
「……」
目次の文字を目で追いながらも、私はその先を読む気にはなれない。
ふう、と溜め息。
その小さな息の音さえも、この図書室には響いてしまう。
小声だったとはいえ私と早瀬君の会話も響いていたんだろうな、と思い、苦笑いした。