私は完璧に俯いてしまった。
ふっと早瀬君が私を覗き込む。
早瀬君の目は、もう見れなかった。
「最後まで泣かしちゃったね。
……ごめんね」
早瀬君は私の頭を撫でた。
今までで一番優しくて温かい手だった。
心臓がぎゅうぎゅうと締めつけられて、潰れてしまいそうだ。
涙は一層、ポロポロと床に落ちる。
「じゃ、サッカー部に少し顔出して帰らなきゃいけないから、途中で俺が鍵返すよ」
何も答えない私の頭を軽くポンポンとして、早瀬君はその場から立ち去った。
私は俯いたままで、早瀬君の足音がだんだん遠くなっていくのを、ただ、ただ聞いていた。