「わざとかと思ったけど、卑屈とか臆病とは別に、そういうクセを持ってる」


「……はい」


こんな時にまで、早瀬君の言うことは耳が痛い。


「もったいないと思うのと同時に、腹が立つよ。
マジで」


「……う」


キツイ言葉に、俯いていた顔をぱっと上げる。


早瀬君の顔は、怒ってる顔じゃなくて、さっきから続く静かな笑顔。


私の反応を見て楽しんでいるのかな？


「俺のこと大人だっていうのも、もしかしたらそういう面があるのかもしれないけど、それが全てじゃない。
楠原の目で見えている俺だけが、早瀬孝文じゃないよ」


いつものことながら、なぞかけのように早瀬君から繰り出される言葉。


私にとっては少しずつ難解になってくる。