『楠原のこと好きだった』


「……」


目の前に何か薄い膜があるかのようだ。


私と早瀬君をとても静かに分けている。


ゆっくり視線を落とす。


……そうだ。


早瀬君が言っているのは3年前のことだ。


今じゃない。


『ちゃんと気持ちがあった』


全てを過去形で話した早瀬君。


早瀬君にとっては、もう、終わったことで……。


「……」


私はそのことに気付き、切なさが心を切るような感覚で一気にブワッと広がった。




「楠原は違ったでしょ？」


「……え？」


急な質問にハッとする。


「本当に好きかどうかも分からないまま、鈴村が勝手に俺に告った。
……違う？」


「……」


早瀬君を見たまま、私は何も言えなかった。


「なんとなく分かってた。
楠原の反応で。
声をかけ切らなかったのも、そのせいだったのかもしれない」


ふっと笑う早瀬君。