「俺、中2の頃、ちゃんと楠原のこと好きだったんだよ」


椅子に座ったまま、ちょっと前のめりになった早瀬君。


その体勢で私を見上げるようにそう言い、ふわりと笑った。


私は急に中学校の時の話をし出す早瀬君を、きょとんとした顔で見た。


「正直、鈴村が代わりに告ってきた時には、楠原のこと、ただ顔と名前は一致するけど、って程度だった」


『鈴村』とは、京子ちゃんのことだ。


「でも、有りがちなことに、そこからどんどん意識するようになって……。
よく見てたんだよ、実は。
声はかけられなかったけど」


……そうだったんだ。


嬉しい。


嬉しいけど……。