「やっと笑った」


「え」


「……」


早瀬君はうっすら笑ったまま、カウンターに肘をついて私を見つめる。




ああ。


また、この、間、だ。


早瀬君を、落ち付いているけれどどこかミステリアスな雰囲気にさせている、
この、
沈黙の使い方。


その上、見つめたまま目を離さないから、尚更私の心拍数が上がる。





「っあ。
や、やっぱり、……早瀬君は大人だね」


私はいかんともしがたい緊張感に耐えかねて、ふいっと目を逸らしながら言う。


「そう見える?」


「うん。
めちゃくちゃ……、そう見えるよ」