「……」


私は、
「今日お化粧してくるかもって期待してたのに~」
ってプンスカしている恵美ちゃん玲奈ちゃんよりも、早瀬君のことが気になって気になって頭がおかしくなりそうだった。


1日ずっと斜め3つ前の早瀬君をチラチラ見ていたけれど、本人はいつもと何ら変わらなかった。


落ち付き払った仙人みたいなスロウな所作で、黒板を見たり、外に目をやったり、欠伸をしたり、シャープペンシルを回したり。


放課後一緒にいられるのが最後だということは、早瀬君にとっては大したことじゃないのかもしれない。


現に、昨日偶然あの会話の場に居合わせなければ、知るのは来週月曜日だったのかもしれないし。




音を立てないようにするが、私の溜め息は大きい。


まるで胸の中に石を飼っているような気分だった。