5時のチャイムが鳴った。
図書室に誰も残っていないのを確認して、2人で廊下に出た。
カチャリ、と早瀬君が施錠をし、職員室の方へ向かおうとする。
「あ……」
あれから喋れなかったから、私はもう少し早瀬君と言葉を交わしたかった。
明日も来週も来月も放課後になれば喋れるんだけど、なんだか少し欲張りになったみたいだ。
「……」
いつものようにゆっくり振り返る早瀬君。
その表情は、やはり、読めない。
「ついていっても……、いい?」
「……いいけど」
頑張って言った言葉に、特別感情を含まない返事が返ってくる。
私は、いつかのように、早瀬君の斜め後ろをちょこちょこと職員室までついていった。