「……」


何で、今、そんな話……?


「……」


早瀬君はほんの少し笑って、私を見つめる。


私は何故か分からないけれど、ちょっとだけ胸が痛んだ。


「い、いひゃい……」


「……ハハ。
ごめん」


パッと私の頬から手を離す早瀬君。


よかった。


これでちゃんと喋れる。


「はや……」


「ウソ。
やっぱ忘れて、今の」


早瀬君はスクッと立ち上がった。


目の前にあった顔は遥か高い位置。


ただでさえ読めない表情が尚更見えない。




「あ……」


会話が終了したのが分かった。


早瀬君が自分で本を拾って、定位置に座り、また本を開き始めたから。