「……。
ふーん」


早瀬君はそっと私の右手を離した。


両腕とも膝の上に交差して、しゃがんだまま私の顔を覗き込む。


「ムカツク話だね」


――え?


ムニッ。


左頬に小さな痛みを感じた。


無表情の早瀬君が私の頬をつまんでいる。


「にゃ、にゃにして……」


私はつままれているので上手く喋れない。


「ハッ」


早瀬君は一瞬笑ったが、すぐにまた掴みどころのない表情に戻った。





「ねぇ。
……楠原」


「……」


早瀬君は私をつまんだまま、話しかける。


「中2の頃、俺がちゃんと喋りかけていれば、今でもつきあってたかな?
俺達」