頭の中で、『一歩踏み出せ』『自分を知ってもらえ』と、声がする。
全て、早瀬君に教わったこと。
今までずっと受け身だったけれど。
今までずっと最初から諦めてきたけれど。
私は多分、変わらなきゃいけないんだ。
そして、今がその時なんだ。
ぎゅっとスカートを握る。
「好きな、人が……、出来たから」
私は掠れた、若干震えがちな声でそう言った。
「……」
いつもポーカフェイスの早瀬君が、一瞬だけピクリと眉を上げ、目を見開いた気がした。
「その人には……、可愛いって、……思ってもらいたい」
心臓の音が、そのまま振動として鼓膜に伝わっているみたいな感じ。
早瀬君を真っ直ぐ見ている私は、目を逸らさないように逸らさないようにって、頑張って耐える。