「……っ」
早瀬君に真っ直ぐ見つめられて、また、声を出してしまいそうになるほど胸が高鳴った。
ただでさえ緊張するのに、こんな至近距離で真正面。
加えて、しゃがんだことで超密室にいるようなドキドキ感。
私は緊張と動揺のあまり、床に膝をつき、へにゃっと腰を落としてしまった。
普通に正座を崩した状態で座り込んだ格好の私。
何も言わない早瀬君は、しゃがんだままで尚も左手は私の手を掴み、右手で膝の上に頬杖をついた。
「……」
「……」
な、何か、言ってくれなきゃ……、困る……。
光が直接当たらないこのカウンター下。
影になって、早瀬君の顔がぐんと大人っぽく見える。
「楠原はさ……」
ポツ……、と早瀬君が喋り始めた。
私は俯き加減だった顔をほんの少し上げる。