「拾って」
「……」
「拾って、楠原」
「っあ、ご、ごめんっ」
ガタガタッ。
ぼーっと早瀬君に見入っていた私は、慌ててしゃがみこみ、本を取る。
ああ、この本。
私も読んだことある。
趣味一緒なんだな、早瀬君と……。
……嬉しい。
手に取りながら、そう思った。
曲げた膝を伸ばし、立ち上がろうとする。
「……っ」
……が、またもやびくっとして固まる。
立ち上がろうとしたものの、目の前に早瀬君の顔。
私の右手は早瀬君に……掴まれていた。
「――っあ」
びっくりして声が出そうになったところを早瀬君が口を押さえる。