「……」
なんか、会話できるような雰囲気じゃない。
それもまた私の勝手な感じ方なんだけれど。
私は宿題をしようと、カバンの中をガサゴソあさり始めた。
バサッ。
びくっとした。
急に私の足元近くに本が落ちてきた。
「悪い……、手が滑った」
ふいに横から早瀬君の声。
あ、ああ……。
早瀬君が落としたんだ、この文庫本。
私はその本を拾おうと手を伸ばしかけた勢いで、パッと早瀬君を見た。
早瀬君も私を見ていた。
今日初めて早瀬君としっかり目が合う。
「……」
無表情の早瀬君。
私はそのまま硬直して、目が離せなくなった。