カタ……。
自習している人がいる離れた場所からも音が響く。
そんな静かな図書室で、静かに会話している私と早瀬君。
いや、もう会話は終わってしまった。
「……っ」
ヤバい。
泣きそうだ。
下を向き、顎に力を入れて、なんとかこらえる。
ふわっ。
――え?
俯いた自分の顔の目の前に、ぬっと自分のじゃない手が現れた。
「……」
ぱっと早瀬君を見る。
いつの間に早瀬君は私を見ながら、私の額の前に手をかざしていた。
――な、何?
パラッ……。
額に前髪が落ちてくる。
気付くと、早瀬君が私の前髪を留めてあったヘアピン2本を抜き取っていた。