カラカラカラ。


「孝文~、あれ?」


ちょうどその時。


図書室の扉が開いて、ここ数日で何度も聞いた声が響いた。


「楠原さん。
孝文、いねぇの?
今日」


木之下君が、自習している人にまで十分響く声で喋りながら、こちらにズカズカ向かってくる。


すっと早瀬君が顔を上げる。


「いる」


「おわっ!
何、下から出てきてんの、お前。
あやしー。
やらしー。
エローい」


私はその言葉に、今まで以上に顔を赤くした。


ダメじゃん。


違うのに赤くなったら、変な信憑性が生まれてしまうし。


ていうか、木之下君、昨日高田君に下品て言ってたのに人のこと言えないんじゃ……。


「陽平のせいで何も出来なかった」


真顔で言う早瀬君。


私は目が点になる。


カウンターの目の前まで来た木之下君は、口角を片方だけ上げて、ハッ、と笑った。


男の子の冗談のやり取りは、
……分からない。