ガタッ。
キィ……。
椅子を出し、開く音。
図書室。
カウンター。
私に数分遅れて、今日も隣に早瀬君が座る。
いつも通り、互いに無言。
彼は本を開き、私は古文の訳をノートに書く。
互いの距離はパイプ椅子2脚分くらい。
「……」
あ、昨日の本と違うの読んでる……。
思ったけれど言えなかった。
だって、私が思わず犯人言っちゃったから。
わざとじゃなかったにしろ、バツが悪い。
「挨拶くらいしない?」
「え?」
急に話しかけられてビクリとする。
「なんか。
一応。
人として」
今更?
既に2週間も経っているのに?
「あ……。
こ、……こんにちは」
組んだ足に頬杖をついていた早瀬君は固まった。